[目次]
はじめに
【1】'pariharati'
【2】具足戒と波羅夷罪
【3】破 僧
【4】結 集
まとめ
[論文の概要]
本稿は筆者の「釈尊のサンガ」をめぐる4部作中の第1論文にあたる。第2論文は次にアップした【文書07】「『現前サンガ』と『四方サンガ』」であり、第3論文は「論文タグ」の中にアップした【論文13】「『仏を上首とするサンガ』と『仏弟子を上首とするサンガ』」であり、第4論文が【論文14】「『釈尊のサンガ』論」である。
「原始仏教教団」とか「初期仏教教団」という言葉があるけれども、これらはどちらかといえばぼんやりと三宝に帰依する仏教徒が、観念的な紐帯によって結ばれている一体感のようなものを意味する。しかしここに「釈尊のサンガ」というのは、釈尊を中心に、インド各地に散らばっていたすべての仏教の出家修行者(比丘・比丘尼)たちと、彼らによって形成されていた各地に散在する1つ1つの「仏弟子たちのサンガ」が統括されていた「組織的な集団」をイメージしたものである。
ところが原始仏教聖典を表面的に見る限りにおいては、このような組織体が存在したという明証は得られない。本論文はしかしながら、1つの「仏弟子たちのサンガ」において具足戒を与えられたものが全国どこに行っても比丘あるいは比丘尼としての権利と義務を持ちえ、あるいは波羅夷罪を犯したものが、1つの「仏弟子たちのサンガ」から追放されれば、すべてのサンガから追放されたという効果を持ちえ、また提婆達多の破僧も「釈尊のサンガ」を簒奪しようとしたものであり、阿難が釈尊の入滅にあたってその行く末を心配したのもこのサンガであり、第一結集も「釈尊のサンガ」としての権威を有しなければならなかったはずである、などという状況証拠を考えれば、「釈尊のサンガ」の存在を認めざるを得ないのではないかという問題提起を行ったものである。
なお本論文は、大正大学真言学智山研究室編輯・智山勧学会発行の『福田亮成先生古稀記念 密教理趣の宇宙』(『智山学報』第56輯 平成19年3月31日)に掲載されたものを、発行者の許可を得てここに転載させていただいたものである。記して謝意を呈します。
なお転載に際してもとの形式が崩れておりますので、引用・参照される場合は元書をご利用下さい。