「モノグラフ」第21号ができました(2017.5.8)

2017.05.08

「モノグラフ」第21号=「個別研究篇」・ができ上がりました。
 これには森章司の【研究ノート10】「原始仏教聖典における「高名な婆羅門」たち」、【研究ノート11】「懲罰羯磨制定年の推定」、【研究ノート12】「阿難が登場し釈尊が登場しない経の説時推定」と、森章司と金子芳夫の【資料集8】「パーリ『経蔵』の六事と仏在処一覧」が掲載されています。今までお送りさせていただいている方々には、近日中にお届けできると思います。

「はじめに」をそのまま転載しておきます。

  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

はじめに

 この「原始仏教聖典資料による釈尊伝の研究」は平成4年から始まりましたので、昨年(平成28年)をもって満25年を経過したことになります。その間「モノグラフ」を20冊刊行し、今回は21冊目になります。

 そしてこの研究もいよいよ総まとめの段階に達し、『釈尊および釈尊教団史年表』(以下「年表」)と『釈尊年齢にしたがって配列した原始仏教聖典目録』(以下「目録」)の刊行をもって大団円を迎えるという計画になっています。
 「年表」は釈尊の満年齢と成道年数の年度ごとに、釈尊と仏弟子あるいは王や主立った在家信者などの事績と釈尊教団形成史に係る事項を記したものです。
 また「目録」は「年表」に記した事績や事項を伝える原始仏教聖典の文献名(パーリと漢訳の「経蔵」と「律蔵」に含まれる文献)を掲げたもので、すべての原始仏教聖典を釈尊の生涯と釈尊教団形成史にそって配列することになります。これには1つ1つの文献の概要も記載します。
 したがって「年表」は「原始仏教聖典による釈尊伝」の目次のようなものであり、「目録」はその本文ということができます。ここに釈尊の成道から入滅までの詳細にしてかつ壮大な「仏伝」が出現することになります。

 この25年間を大まかな期に分けてみますと次のようになります。

第1期 この研究の研究計画を策定するための準備期(平成4年〜平成5年)

第2期 原始仏教聖典や仏伝経典などから「釈尊伝データ」を採取し、コンピュータ上に構築したデータベース構築期(平成6年〜平成10年)

第3期 主に基礎研究を行うとともに資料集を編集した基礎研究作業期(平成11年〜平成16年):「モノグラフ」第1号〜第9号の発行

第4期 基礎研究を継続しながら個別研究を行った基礎研究+個別研究作業期(平成17年〜平成25年):「モノグラフ」第10号〜18号の発行

第5期 「年表」と「目録」編集を視野においた釈尊と釈尊教団形成にかかわる事績年代の推定作業期(平成26年〜):「モノグラフ」第19号〜の発行

となります。
 いうまでもなく現在はその最終期に属し、この「モノグラフ」もまさに「年表」と「目録」を視野においた論稿を収載しています。
 
 25年というのは四半世紀で、生まれたての赤ちゃんが立派な青年になる年数です。この間に若干の入れ替わりはありましたが、発足以来基本的には下記のメンバーでやってきました(記載順は参加の順序を示しています)。当時の青年は壮年になり、壮年は老人になっています。
 1つの具体的な研究テーマに絞った研究会が、25年間も変らず和気あいあいと続けてこられたのはチームワークがよかったということでしょう。内輪話になりますが、いつも研究会の後に行う「場所を変えての研究会」と称する仕上げの会のおかげかもしれません。まさしくアルコールは潤滑油としてわれわれのチームワークを支えてくれてきたといってよいでしょう。
 
 そしてやっぱり特筆しなければならないのは、中央学術研究所の物心両面にわたるご支援です。まさしく研究所の皆さんは、私たちの意気に感じてくださっているのだと思います。これがなかったらそもそもこんな大掛かりで、長期にわたる研究ができるはずはありません。衷心より謝意を表します。


  平成29年4月17日
        

釈尊伝研究会代表   森 章司(東洋大学名誉教授 博士・文学)
会員   金子芳夫(中央学術研究所研究員 修士・文学)
 岩井昌悟(東洋大学教授 博士・文学)
 本澤綱夫(東洋大学大学院修了 修士・文学)
 石井照彦(中央学術研究所職員   修士・文学)