合宿研究会報告 森 章司(2016.6.8)

2016.06.08

 6月4日(土)・5日(日)の1泊2日の日程で、中央学術研究所の会議室と立正佼成会の宿泊施設をお借りして合宿研究会を行い、「釈尊年齢にしたがって配列した原始仏教聖典目録」の編集方針について討議しました。

 仏教の経典は、原始仏教(釈迦仏教)のものも大乗仏教のものもすべて、「如是我聞一時仏在舎衛国祇樹給孤独園」というふうに始まります。このなかの「一時」というのは「ある時」という意味です。これは「経」の形式ですが「律」も基本的には同じです。私たちはこの「経」と「律」を併せたものを「聖典」とよんでいます。
 要するに仏教の聖典にはある出来事が「どこ」を舞台にしていたかは示されているのですが、それが「いつ」のことであったのかは示されていないということです。
 しかしながら釈迦仏教の聖典は釈尊の言行録ですから、その聖典のさりげない記述を、すぐれた探偵がかすかな証拠も見逃さないように注意深く読み解けば、それがいつのことであったのかあるいはだいたいいつごろのことであったのかが判ってきます。私たちは釈迦仏教聖典にもとづいて釈尊の伝記を明らかにしようとする研究を行っているわけですが、ことばを換えていうなら、この「一時」がいつのことかを明らかにする研究であるということができます。

 そしてこの研究も大詰めを迎え、どの聖典の「一時」は「いつ」のことであったかがだいぶ判ってきました。そこでそれを「目録」にして発表しようということになったわけです。これと同時に「釈尊および釈尊教団史年表」も発表するつもりでいます。

 「年表」は釈尊の年齢にしたがって釈尊と釈尊教団の事績を示したものです。「目録」はこの「年表」に対応するもので、釈尊が「どこで」「だれに」「どのような法」を説いたという情報が記載されているパーリ語と漢訳の「経蔵」「律蔵」併せて総数約12,000ほどの文献を、「年表」に記載された釈尊の年齢・事績順に示そうとするものです。
 形式は、釈尊の年齢・事績を基準に「当該経」「同時経」「からまで経」「以前経」「以後経」を示します。
  「当該経」というのは、釈尊の当該事績そのものを記した文献です。
  「同時経」というのは、釈尊の当該事績と同時期の事績を記した文献です。
  「からまで経」というのは、当該の釈尊の年齢・事績からその後のある特定の年齢の事績までの間の事績を記した文献です。
  「以前経」というのは、当該の釈尊の年齢・事績以前の事績を記した文献です。
  「以後経」というのは、当該の釈尊の年齢・事績以後の事績を記した文献です。
 「からまで経」以下はぼんやりした期間の限定に過ぎませんから、より詳細な釈尊の伝記を明らかにするには「当該経」と「同時経」の数をできるだけ増やすことが必要です。これについては「目録」ができ上がった後にご評価をいただきたいと思います。
 なおこの目録には12,000ほどの1つ1つの文献について、それが釈尊何歳のどの事績の「当該経」「同時経」「からまで経」「以前経」「以後経」であるかが判る「索引」もつけます。

 写真は釈尊伝研究会のメンバーですが、机の上に置いてある黄色い表紙の冊子は2010年11月30日に作った試作版の「目録」5冊の中の1冊です。ちなみに写真の前列左から森章司、本澤綱夫、岩井昌悟、後列は石井照彦、金子芳夫です。


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