6月定例研究会報告 森 章司(2013.6.25)

2013.06.25

 6月19日(水)に定例研究会を行いました。「釈尊伝研究会」としては第18回目の研究会です。

 "Buddhist Monastic Life"の和訳について
 本澤綱夫、岩井昌悟は和訳をだいたい終了し、著者のMohan Wijayaratna氏の翻訳出版に関する許諾を得るばかりになっていましたが、著者に連絡が取れないまま無為に半年を過ごしてきたので、前回の5月29日の研究会で翻訳を捨て、我々独自の『仏教の僧院生活』を書く方針に切り替えたところでした。
 しかし物事とはこういうものなのでしょう、その直後の6月4日にWijayaratna氏からのメールが舞い込みました。もちろん翻訳についてはOKでしたが、近々に改訂版を出すので、このフランス語版から作業してほしいということでした。われわれの翻訳は英語訳からのものであり、この英語訳は体裁において原フランス語版とはかなりの変更(我々はそれを改善ととらえています)がなされていて、これを原フランス語版に戻し、しかも改訂箇所(著者はこの改訂板の刊行が待てないなら、その原稿を送ると言ってくださっていますが)を修正しなければならない労力を考えると、やっぱり翻訳は前回に決定したとおりに放棄せざるをえないと判断し、著者にはその旨のメールを送信しました。
 ところで前回報告したわれわれ独自の『仏教の僧院生活』についてですが、その前に現在かなりのところまでまとまっている「パーリ・漢訳対照『律蔵』規定便覧」をより完全なものにして刊行することにしました。これは釈尊伝研究会編ということになりますが、当面の作業は本澤、岩井両氏に委ねることになりました。『原始仏教聖典にみる仏教の僧院生活』(仮題)の執筆はその後の作業ということになります。

 「原始仏教時代の通商・遊行ルート」(仮題)について
 金子芳夫担当の標記研究については、「釈尊の大都市2点間の幹線遊行ルート」一覧表が提示されました。ここには釈尊が例えば王舎城とヴェーサーリー間を遊行されたとする回数が22回上げられていますが、資料には『涅槃経』関連資料が8点含まれています。したがって見かけ上の回数は8回になりますが、実回数は1回と考えなければならないでしょう。資料の相応関係を調査することは大変な作業ですが、可能な限りこれを調査して、重複している回数は除外した実回数も表に盛り込むことにしました。
 また仏弟子たちとその他(例えば商人たち)の遊行についても同じような作業を行い、これを合わせなければなりません。
 そのほか「支線遊行ルート」については、どのあたりにあったのかがわからない地名がいくつかあるようです。「モノグラフ」第15号に掲載した「原始仏教聖典の仏在処・説処一覧−−その他国篇−−」において不明地をかなり徹底的に調査してあったので、それ以上に調査する必要はなかろうと考えていましたが、そうでもなそうです。しかし現時点では、わからない地名を精細に調査することが遊行ルートの解明にどれだけ役立つかわかりません。資料の全貌が明らかになった時にその対処方法を検討します。

 「サンガと律蔵諸規定の形成過程」(仮題)について
 森章司が担当している標記研究は、草稿ができあがりましたのでこれを推敲しています。

 「原始仏教聖典の中に釈尊の人種をさぐる」について
 標記研究のための「ネパール・インド現地合宿研究会」の準備を進めています。カトマンドゥでは釈迦族の末裔とされるシャーキャを姓とする方にお会いしたいものとそのつてを探していますが、なかなか実が上がりません。長い間ネワール仏教を研究している吉崎一美さんにも尋ねてみましたが、彼の知っているシャーキャさんは亡くなったり、外国に留学中だったりしているそうです。
 どなたでも情報をお寄せくだされば幸いです。