4月研究会報告 森 章司(2013.5.7)

2013.05.07

 4月の研究会を5月1日(水)に行いました。「釈尊伝研究会」としては第16回目の研究会です。主に「原始仏教聖典の中に釈尊の人種をさぐる」というテーマで討議しました。

 「原始仏教聖典の中に釈尊の人種をさぐる」というテーマは、いよいよ我々の「釈尊伝」を書くにあたり、釈尊がどのような皮膚の色をし、どのような顔立ち・体型をされていたか、というイメージをつくりたいという動機がもとになっています。
 今回は、原始仏教聖典のなかに記述されている釈迦族の起源伝承、米食文化にあったこと、釈迦国とコーサラ・マガダとの関係、サンガの運営法、婚姻の風習、釈尊の遺骨八分伝承、anātman説などから、釈迦族がアーリヤ系人種であったかそうでなかったかという議論をしました。こういう方法論で議論すると、釈尊はアーリヤ系人種ではなかったという線が強くなりますが、しかしこうした問題の立て方では隔靴掻痒の感を拭えません。非アーリヤといってもいろいろの可能性があるからです。やっぱり現地に行ってさまざまなことを観察するのが肝要という印象を強くしました。
 なお、旅行社からネパール・インド調査費用の見積書をいただきましたが、我々が予想していたよりもずっと高額なのでびっくりしました。説明によると最近の円安の影響で年初よりは2割方高くなっているということでした。そこでホテルのランクなど、切り詰めることができるところは切り詰めるようお願いしました。

 "Buddhist monastic life--according to the texts of the Theravāda tradition"の翻訳の件については、未だにMohan Wijayaratna氏とは連絡が取れていません。担当者から「とりやめよう」との声も出ましたが、今月中旬まで待ってそれでも埒が明かないようなら、翻訳以外の形式でまとめることにしました。

 個人の分担課題では、金子芳夫から「原始仏教時代の通商・遊行ルート」(仮題)の「凡例を作成するために」という報告がありました。この元データは微に入り細を穿つと表現するのがふさわしいほど精密に採取されています。したがってその「凡例」もまた複雑なものにならざるを得ません。しかしあまりに細かすぎるのでは判りにくいですから、もう少し大ざっぱにまとめる方向で検討することになりました。

 このほか森章司は「サンガと律蔵諸規定の形成過程」(仮題)という論文の第5節「十衆白四羯磨具足戒法の制定とサンガの形成」、第6節「受具足戒資格審査項目(遮・難)の制定」を準備していましたが、時間がなく報告できませんでした。
 すでに第7節「摩訶迦旃延(Mahākaccāna)の生涯と五衆白四羯磨具足戒法の制定」、第8節「ヴェーランジャー(Verañjā)での雨安居年と波羅夷罪第1条の制定」、第9節「波羅夷罪第2・3・4条の制定」も粗稿はでき上がっているので、これから完成原稿を作る作業に入ります。