「モノグラフ」第17号ができました  森 章司

2012.05.24

新態勢としては初の「モノグラフ」第17号、「基礎研究篇」Ⅶができ上がりました。これには森章司の「原始仏教聖典にみる釈尊と仏弟子たちの一日」と「迦絺那衣(kaṭhina)の研究」という2つの論文が掲載されています。

いろいろな事情を説明する代りに、巻頭に書いた「はじめに」の文章をそのまま掲載しておきます。

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 新態勢としては第1号の、通しては第17号となる「モノグラフ」を発行する運びとなりました。
 新態勢といいますのは、それまで17年もの長きに亘って中央学術研究所の研究事業の一環として位置づけていただいていたこの研究が、平成22年(2010年)12月1日をもって、新しく発足させた「釈尊伝研究会」を中央学術研究所が外部から支援してくださる形に変わったということです。
 といいましてもこのとおりこの研究報告書は「『中央学術研究所紀要』モノグラフ篇」として発行していただいておりますし、「釈尊伝研究会」は今まで通り研究室やパソコン、図書などを以前と変わりなく使わせていただいています。端的にいえば今まで専従者(嘱託職員)を1名とアルバイトを1名雇用していただいていましたが、それがなくなくなったということと、研究代表者や研究分担者がいただいていた研究費や海外研究費・図書購入費などの補助がなくなったというにすぎません。
 したがってこの「釈尊伝研究会」も、今まで通り代表者の筆者と金子芳夫、岩井昌悟、本澤綱夫の4人が中心メンバーで、新しく作った「釈尊伝研究会内規」には「会員の総意に基づいて新たな会員を加えることができる」としてありますが、殊更に参加を呼びかけることをしておりませんので、これまで縁のあった石井照彦、仙仁晶、畑中茂の3君をメンバーに加えたに過ぎません。しかしゆくゆくは、我々の研究目的と研究方法に賛同してくださり、一緒にやりたいという志をお持ちの方があればメンバーを増やしてもよいとは考えています。
 
 さて今号は森章司の2つの論文のみを掲載することになりました。研究分担者は以前と同様に互いに分担しあった課題を研究しておりますが、たまたま今号にその成果を発表するには至れなかったというに過ぎません。
 第1の【論文23】「原始仏教聖典にみる釈尊と仏弟子たちの一日」は、釈尊と仏弟子たちの一日はどのようなものであったかということを原始仏教聖典に探ったものです。第2の【論文24】「迦絺那衣(kaṭhina)の研究」は、もともとは第1論文の姉妹編として「釈尊と仏弟子たちの一年」を書いてみようと始めたものですが、作業を進めているうちに、実はすでにわれわれのホームページhttp://www.sakya-muni.jp/に掲載してある【文書03】森章司「『シンポジウム 釈尊はどのような生活をされていたか−−スマナサーラ長老とともに考える』基調報告(2002年12月)」に、あまり付け加えるべきことがないことに気づき、急にテーマを変更したものです。
 もとより迦絺那衣は釈尊と仏弟子たちの一年と密接に関連するものではありますが、とはいえこれを研究したからといって、先の報告の内容を訂正することにはならないであろうという予測を持っておりました。ただ迦絺那衣については、筆者自身があまりよく理解できていなかったので、純粋に学問的な興味から確かめてみようということになりました。しかしながら思いの外手間取り、またかなり大部の論文になってしまいました。想定外のことでしたが、これにより学界においても今まであまりはっきりしていなかった迦絺那衣というものが、かなり明確になったのではないかと思います。とは言いながら、筆者にも未だ確信のもてないところがないとはいえません。お気付きのところがあったらぜひご教示ください。

 この「モノグラフ」の発行は、第16号を2010年(平成22年)1月に発行してから2年余の空白を持つことになってしまいました。もちろんこれに他意があったわけではなく、長きに亘って援助をしていただいた中央学術研究所とその母体である立正佼成会に、研究の締めくくりとしての報告書代わりに、『釈尊および釈尊教団史年表』と『釈尊年齢にしたがって配列した原始仏教聖典目録』の編集に没頭していたからに外なりません。この2つは未だ諸事が整わないために内部文書のままになっておりますが、いずれは公にしたいと考えております。

 今まではもちろんのことでしたが、今号も中央学術研究所に対する謝辞なくしてこのご挨拶を終えることはできません。心からの御礼を申し上げます。

             平成24年5月7日

                        釈尊伝研究会 代表  森 章司