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就学年齢 学業の修了年齢 遊学年齢 就業年齢 結婚年齢 立太子(副王位)年齢 即位年齢 隠棲年齢 老耄年齢 死没年齢


 本稿はかつて研究分担者であった中島克久が担当して、原始仏教聖典やその注釈書、本縁部経典などの後期原始仏教聖典などから、就学や結婚などのライフステージの年齢記事を収集し整理した3つの「資料集」すなわち 
【資料集1-1】原始仏教聖典に見られる年齢記事一覧[Ⅰ]─"Jātaka-aṭṭhakathā"篇─(本「モノグラフ」第1号所収 1997.7) 
【資料集1-2】原始仏教聖典に見られる年齢記事一覧[Ⅱ](本「モノグラフ」第6号所収 2002.10) 
【資料集6】本縁部経典に見られる年齢記事一覧(本「モノグラフ」第10号所収 2005.4)
 に収められている資料をデータとして、これらを統計的に処理し、加えて同じく中島が担当した 
【資料集4】「古典インド法典類の年齢記事資料─幼児期の浄法(saṃskāra)と住期(āśrama)を中心に─」(本「モノグラフ」9号 2004.5) 
を参考にして、釈尊時代のインド人の、階層別・男女別の、目次に掲げたようなライフステージの平均的かつ標準的な年齢を導き出そうとしたものである。
  そのまとめを以下に掲げ、概要に代える。

  以上、就学、学業の修了、遊学、就業、結婚、立太子(副王位)、即位、隠棲、老耄、死没などの各ライフステージの平均年齢ないしは最頻値を、原始仏教聖典(A文献)と後期原始仏教聖典(B文献)を材料にして資料を収集した資料集「原始仏教聖典に見られる年齢記事一覧」「本縁部経典に見られる年齢記事一覧」「古典インド法典類の年齢記事資料」などをもとに、主に統計的な分析を施しながら、若干の考察を加えて、われわれの研究の基準とすべき標準的な年齢を求めてきた。その結果のみを示すと次のようになる。 
就学年齢 階級に関係なく8歳(男)
学業の修了年齢 16歳(男) ※成人年齢に相当する。 
遊学年齢 16歳(男) ※基礎的な学業の修了が16歳であったことを裏付ける 
就業年齢 16歳(男) ※基礎的な学業の修了が16歳であったことと、結婚年齢が16歳であるのと対応する。 
結婚年齢 16歳(男・女) ※ただし女子に関しては初潮以前の幼児婚もひろく行われていた。 
立太子(副王位)年齢 16歳(男) 即位年齢 16歳(男) ※ただし王位につく資格を有する年齢という意味である。
隠棲年齢 16歳(男子) ※仙人への道に入るという意味である。 
老耄年齢 80歳 ※成人に達して以降の平均余命はかなり高かった。 
死没年齢 120歳 ※説話的にモディファイされた年齢であって、幼少年期の死亡も多かった。
  ただし「はじめに」にも書いたように、原始仏教聖典ならびに後期原始仏教聖典に記載されている年齢記事が絶望的と言いうるほどに乏しいため、必然的に考察の対象とすべき資料数が少なくなった。したがって統計的な処理をするという所期の目的は十全にはたっせられなかったと反省しなければならない。
  しかしながら学業の修了年齢も、遊学年齢も、就業年齢も、結婚年齢も、立太子年齢も、即位年齢も、隠棲年齢も、すべてが16歳であるということは、当時の社会においては16歳が成人年齢であったことを示し、この年齢がその後の人生の進路を決定する非常に重要なポイントになる、ということはいえるであろう。

  なお本稿は、以前に中島が草稿としてまとめていた資料集「ライフステージ年齢資料の整理と平均および最頻値──原始仏典、Jātaka-aṭṭhakathā、本縁部経典より収集された男女別・ライフステージ年齢表──」をもとにして、森が考察部分を加えて論文として編成しなおしたものである。